QRP移動用アンテナの詳細(4)VCH式移動用アンテナ

(2008年2月12日 一部修正・加筆)

VCH式移動用アンテナは、QRPクラブの仲間であるJP6VCH松木さんが開発された高性能アンテナです。小型軽量で移動運用に適している上、簡単に自作できます。CQ誌の新QRP通信で作り方等が詳報されたことから愛用者が急増しています。

(参考文献)
松木真一郎(JP6VCH)新QRP通信第6回VCH式移動用釣り竿アンテナの作り方、CQ誌2006年11月号、p.141-146.
松木真一郎(JP6VCH)新QRP通信第10回VCH式移動用アンテナ応用編、CQ誌2007年3月号、p.139-141.


このアンテナは基本的にはλ/2(半波長)オフセンターフェッドです。上側のλ/4のほとんどを大型のHigh Qコイルで短縮したことから、電流腹が高い位置に来るのですが、これがこのアンテナを高性能にしているポイントのようです。実際によく飛びます。垂直系のため打ち上げ角が低いようで、特にDXにはよく飛びます。私の7メガと14メガの初交信はいずれもW(米国)でした(リグはKX1で出力1.5W)。特に14メガの2番目のQSOは、14.060でCQを打ってWB6HGJ/QRPから呼ばれた2way QRP QSOでした。VCHアンテナ恐るべし!!

VCHアンテナの種々の条件下でのシミュレーション結果については、下記のJA1CTB谷澤さんのサイトに詳細に報告されています。ご参照下さい。谷澤さんは学生時代からの友人なのですが、アンテナシミュレーションがお得意なので、今回VCHアンテナのシミュレーション解析をお願いしました。

http://ja1ctb.drivehq.com/index_J.htm

これらのシミュレーション結果の中で私が注目したのは、グランドエレメントを2本にして対称展開すると指向性が緩和され、ほぼ無指向性になる点と、グランドエレメントを給電点から斜め下方に引き延ばすと、水平に引き延ばした場合に比べて若干ゲインが増える可能性がある(約1dB)点です。自転車・徒歩移動で可能な範囲でこの特性を生かしたアンテナにしようと思い、下記のアンテナを作ってみました。

なお、後日JF1RNR今井さんから伺ったお話では、松木さんは最初グランドエレメントを2本で実験しておられたとのことです。CQ誌に発表された際は、簡単化のため、グランドエレメント1本にされたようですね(2007年5月24日追記)。

なお、私は移動運用には、このVCHアンテナのほか、G5RV変形RFMDアンテナ、その小型版のRFMD-Sアンテナ、ロープロファイルのGPアンテナなどを使っています。


CTB・HAN式VCHアンテナの全景:

竿はRFMD-S用の5.4m長グラス竿を使用(松木さんのオリジナルは4.5m竿を使用)。オリジナルより少し長いことから、給電点が地上1m弱(70cmくらい?)の高さにある。このため、2本のグランドエレメントを斜め下方に引き延ばすことが出来る。

松木さんのオリジナルは4.5m竿ですが、手持ちに5.4m竿がありましたのでそれを流用しました。おかげで給電点を少し高くできるので、グランドエレメントの展開が有利になったというわけです。まぁ、一種の怪我の功名ですね。

ただし、5.4m竿にすると仕舞長が長くなるため、普通のザックの中には収まりません。サイドポケットとかに入れることになりますが、ヤブこぎとかでは引っかかって邪魔になる場合があるようです。ご自分の移動スタイルに合わせて、4.5mか5.4mかお決め下さい(2008年2月12日追記)。

余談ですが、竿はカーボンではなくグラス竿でなければいけません。カーボン竿は導電性があるため、これに沿わせたエレメントから放射される電磁波により、竿の内部に電流が誘起されるのですが、竿の抵抗によってその電流が熱消損してしまいます。エレメントから放射された電磁波エネルギーの一部(かなりの部分?)がロスになってしまうわけです。このため、エレメントを沿わせて使う垂直系アンテナにカーボン竿を使うと、「聞こえるけど飛ばないアンテナ」になってしまいます。ご注意下さい。

2007年4月22日QRPエコデイでの使用状況(市川市の江戸川河原にて)
リグ:KX-1(7メガ3W、10メガ2.5W、14メガ1.5W)、電源:小型シール鉛蓄電池(3.2Ah)+太陽電池パネル(定格250mA)


コイルとエレメント:

トップエレメントはオリジナルより少し長めの1.5m。1.5D-2Vの外皮のみ使用。

コイルは、松木さんの記事にあるとおりに製作。タップ位置は、7メガ29ターン、10メガ12ターン、14メガ0ターン。トップエレメントがオリジナルより少し長いため、オリジナルよりコイルの巻き数は少なめであり、14メガの場合、コイルは全てスキップすることになった。タップ位置の調整には、MFJ-269を用いた(下の方に調整の時の写真があります)。

 HAN式VCHアンテナの調整結果(3m長同軸の時)

周波数(MHz) コイル巻き数 SWR Rs(Ω) Xs(Ω) グランドエレメント
7.003 29 1.1 43 0 5.2m長
7.029 1.1 57 0
10.104 12-1/5 1.0 46 0
10.141 1.0 50 0
14.058 0 1.4 35 8 2.6m長
(両端を折り返し)
13.994 1.4 36 6


(注)10メガの「12-1/5」は、12ターンから1/5周少ないポイントにタップを立てた、という意味。

センターエレメントはオリジナルと同じ3.4m。JH7VNR大木戸さんからもらったビニル線を使用。

グランドエレメント(5.2m長×2本 対称配置)は、後述のように、14メガでは折り返して半分の長さにして使用。これもJH7VNR大木戸さんからいただいたビニル線を利用。


給電点(7メガ、10メガの場合):

給電点はタカチのSW−55ケース内にフロートバラン(FT-82-77コアに5回巻き)を納めてある。

エレメントの接続は、給電点側は陸軍ターミナル、エレメント端にはバナナチップを取り付け、差し込み式にしている。

グランドエレメントは、5.2m長を2本対称に配置している。給電点から地面に着くまでの区間は、斜め45度に引き下ろしている。これらはJA1CTB谷澤さんのシミュレーション結果を参考にした。グランドエレメント用の電線は、これもJH7VNR大木戸さんからの頂き物。

給電点からは、3m長の同軸(3D-2V)でリグにつなぎ込む(コネクタはBNC)。このくらいの長さの同軸で、アンテナから少し離れた場所で運用する方が電波の飛びがよい(人間は良導体のため電磁波を吸収してしまうから、離れられるだけ離れた方がよい)。


給電点(14メガの場合):

14メガの場合、グランドエレメントを二つ折りにして有効長を半減させている。エレメント端に端子を取り付けてあり、給電点の陸軍ターミナルに挟み込む。これは、CQ誌に紹介されたJP6VCH松木さんのアイデア。賢い方法ですねぇ!!

この写真では給電点を竿に取り付けるためのゴム紐が見える。これは、パンツのゴム(100円ショップで購入)を約40cm長に切り、給電点のケースの中に空けた2個の穴を通してあります。このゴム紐を竿に蝶結びすることにより、給電点を簡単に取り付けることが出来ます。

なお、これはJF1RNR今井さんに指摘されて気付いたのですが、14メガの場合、給電点から上の長さは1.5m(トップエレメント)+0.2m(コイルタップ用ワニ口ケーブル)+3.4m(センターエレメント)=5.1mですので、丁度λ/4になります。従って、14メガの場合は、ラジアルが大地容量結合のλ/4 GPアンテナとなります(2007年5月24日追記)。


給電点の内部:

ケースはタカチのSW−55。

フロートバランはFT-82-77コアに5回巻き。

竿へ取り付けるためのゴム紐(約40cm長)は、ケースに穴(3mm)を2個空け、その中を通している。穴が適当に小さいのとゴムが平型なので、ゴム紐が抜け落ちることはない。

77材はhighμのため少ない巻き数で高い阻止インピーダンスを得ることが出来ますが、高い周波数での使用に限界があります。私の実験では、小出力の場合、18MHzまでであれば実用上問題なく使用可能と考えられました(2008年2月12日追記)。


調整中のスナップ(1):

2007年4月15日、行徳の弁天公園(徒歩2分程度)へ自転車で行き、調整を行った。午後の遅い時刻から始めたので、終了したときには薄暮状態になっていた。

調整が終わったところで、7メガで聞こえる局を呼んでみたところ、K7MIと簡単に交信できた。続いてVE7CCとも簡単に交信できた。いくらJIDXコンテストでCQ連呼中のビッグガンとはいえ、当方は1.5Wである。恐るべしVCHアンテナ・・・である。


調整中のスナップ(2):

今回の調整はMFJ-269を使ったおかげで簡単にできた。希望周波数で、リアクタンスが最小になるようにコイルタップ位置を調整したが、この際、MFJ-269だと周波数、インピーダンス、リアクタンス、SWRが直読できるからである。

調整時は、運用時と同じく3m長の同軸(3D-2V)つないだ。調整終了後に、ためしに1m長の同軸に付け替えてみたが、リアクタンス最小値の周波数が若干ずれた(ただし、実用上は全く問題ない)。それ以上に、SWRの変化が急になった。3m長の時はSWRが実用値の範囲は問題なく広かったが、1m長ではSWRの実用値範囲はかなり狭く、変化もシャープになった(それでも実用上は大きな問題はない)。同軸の長さの違いによるロスの違いが効いているのだろうか・・・

アンテナアナライザは、アンテナ調整には本当に重宝します。VCHアンテナ等の調整でお困りの場合、行徳または盛岡へお出で頂ければ、お手伝いいたしますので、お問い合わせ下さい。また、事情によっては、私で行ける場所であれば、MFJ-269持参でお手伝いに参上しますので、ご相談下さい。無論、私もサラリーマンですから、日時や場所の都合がつけば、と言うことになりますので、この点はあらかじめご了承下さいね。


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