Heilのマイク(ヘッドセット)をIC-706シリーズに繋ぎ込むためのマイクアンプ


アイコムのIC-706シリーズは移動運用にポピュラーなリグです。固定でお使いの方も少なくないと思います。私は普段アイコムのリグを使わないので今まで縁がなかったのですが、今回、トルコで運用を行う際、ホストとなって下さったTA2IJソイハンさんのメインリグがIC-706MKIIGだったものですから、初めて使う機会がありました。結果的になかなかいいリグであると実感したのですが、実は、マイクに大問題があったのです。ここではその顛末を含めてご紹介しましょう。
 なお、本稿を公開直後、JJ1BDX力武さんより、大変参考になるご指摘を何点か頂きましたので加筆いたしました(2005年5月14日)。

私は、コンテストや海外運用のようなPCロギングを行う場合のphoneの運用には、Heilのヘッドセットを使っています(プロセット、BM-10-4)。以前、DXバケーション掲示板テクニカル(JF1OCQ三宅さんが大家さんのBBS)で、IC-706シリーズなどアイコムのリグにHeilのヘッドセットをつなぐとマイクゲインが不足してうまく行かない、との問題が話題になりました。このため、OE1ZKC田中さんはマイクアンプを自作して外付けしておられるとのことでした。その時は自分に縁のない話しと思って読み流していましたが、TA2IJのシャックを借りて運用ができるとなったため、一気に自分の問題になってしまいました。そこで、Heilのヘッドセットや各種のリグにお詳しいJA8CCL木下さんにまず色々と教えていただきました。それによりますと・・・

  1. 簡易的には、マイク端子に出ているDCオフセットをコンデンサでカットしてHeilのマイクエレメントをつなぐ。これだけだとゲイン不足の問題は残るので、IC-706のスピーチコンプレッサをONにする。マイク入力レベルが小さいのでコンプレッションは効かないが、ゲインを上げたのとほぼ同じ効果があり、なんとか使えるようになる。
  2. 根本的には、1石くらいのマイクアンプを外付けして、DCカットとゲイン不足の両方に対処する。外付けアンプのゲインは10dBくらいあれば十分。

ということでした。余談ですが、これに絡む私と木下さんのやりとりを載録しますと・・・

ということでしたので、やむなく正攻法の1石アンプ外付け作戦で行くことにしました。何かないかと部品箱等をひっくり返してみたところ、FCZ研究所の1石マイクアンプキット(#94)が出てきました(いつ頃何の目的で買ったのか、それともどこかでもらったのか(はたまたジャンク交換会か何かの時に拾ってきたのか)覚えていないのですが・・・)。説明書にはゲインがどのくらいだか書いてありませんでしたので、JH1FCZ大久保さん主催のBBS上でお尋ねしたところ、以下の回答を頂きました。

ということで、今回の目的には丁度よさそうです。なお、後でわかったのですが、大久保さんの書かれた「自作電子回路テキスト」(CQ出版社)には、この1石アンプの、種々の抵抗条件下での増幅率が一覧表になって示されています。

で、早速これを使ってマイクアンプを組み上げることにしました。以下に回路図を示します。


#94の1石マイクアンプは、2SC1815が1本、抵抗が2本、ケミコンが2個、ゲイン調整用の半固定VRが1個と小型のFCZ基板1枚のコンパクトなキットです。お値段も250円と手頃です。私のような地方在住者にとっては、部品を個別に集めるより安上がりです。

ただし、無線環境での使用を前提としていないようで、パスコンが全く入っていません。そこで、今回は、基板上に3箇所パスコンを入れました(マイク入力、出力、電源)。今回パスコンには333を使いましたが、これは、たまたま沢山手持ちがあったからで、103から104の間のコンデンサなら何でもOKです。また、3個の値がバラバラでも全く問題ありませんから、手持ちのコンデンサを適当に利用されるといいでしょう。

なお、IC-706のマイク入力端子では、せっかく、マイク用のGNDと電源やPTT用のGNDが別々になっているのですが、回路の関係上、これらが一緒になってしまう点が気になりました。幸いなことに、今回の私の場合は、後で述べるように、回り込み等の問題は全くありませんでしたので、とりあえず結果オーライでした。

ところで、上記の回路図には、マイクアンプ基板から出る音声出力のラインにフェライトビーズが入っていますが、実は、私の作ったものには、これを入れ忘れたのでした。当然ですが、安全のためには入れた方がいいわけです(JJ1BDX力武さん、ご指摘有り難うございました)。なぜ入れなかったんでしょうねぇ。自分でも不思議です。モジュラーケーブルにスリーブコアを入れるからいいやと思ったんでしょうか・・・ その割りには、電源ラインにはしっかりビーズを入れていますが。私の場合、とりあえず、結果オーライでしたが、皆様はご注意を。



マイクアンプの基板が出来上がったところで、バラック状態で確認テストを行いました。

  1. まず、BM-10-4のマイク出力を1kオームの負荷抵抗で終端してオシロで出力を見てみたところ、私の「アーッ」という声の出力は約50mVでした。
  2. 次に、BM-10-4のマイク出力を、多少使い込んだ006Pを電源として繋ぎ込んだ1石マイクアンプにつなぎ、その出力を、同様に1kオームの負荷抵抗で終端してオシロで出力を見たところ、私の「アーッ」という声の出力は、アンプのゲイン最小で約100mV、ゲイン最大で約800mVでした。ここで、多少使い込んだ006Pを電源にしたのは、IC-706のマイクコネクタに供給されている電源電圧が8Vなので、可能な限りそれに近い状況としたかったためです。
  3. すなわち、この1石マイクアンプのゲインは、IC-706での使用状態で約6dBから24dBと考えられました。

これで、必要とされる約10dBのゲインは十分確保できたことがわかりましたので、ケースに実装しました。ケースは、気休めかも知れませんが、回り込みを極力減らす目的で金属製(アルミ製)としました(本当は鉄製がいいのでしょうが・・・)。同じく、回り込み防止のため、マイク入力の引き込み線、電源の引き込み線にはフェライトビーズを5個ほど入れました。IC-706のマイクコネクタはRJ45モジュラージャックですが、これは、職場の模様替えの際に不要になったモジュラーケーブルを切ってケーブルごと利用しました。最後に、これも回り込み防止のため、リグに差し込むRJ45コネクタの直前に、スリーブコアを2個入れました。私の場合は、3D用のスリーブコアが丁度いいサイズでした。本当はもう2個ほどよけいに入れたかったのですが、手持ちの関係から2個になりました。具体的な実装状況は下記の写真をご参照下さい。


ケース内の様子(1):

ケースはタカチのYM-50。中央奥に見えるのがFCZ基板上に組んだ#94 1石マイクアンプ。基板上の小豆色のコンデンサが333パスコン(この写真では2個しか見えないが、もう1個はトランジスタの後ろに隠れている)。一番奥側に見える青色の丸いのがゲイン調整用の半固定VR。

マイク入力はモノラルミニプラグ。PTT入力は、私の場合はRCAプラグ。これは、フットSW等でリニアを直接オンオフする場合があるため、リグのオンオフ用システムはRCAプラグで統一しているので。

マイクアンプの出力等とモジュラーケーブルとの接続は、蛇の目基板を介して行った。


ケース内の様子(2):

こちら側からは、3個のパスコンが全て見える。

蛇の目基板を使ったモジュラーケーブルと各種配線の接続もおわかり頂けると思う。

モジュラーケーブルのケースへの固定は、一旦、タイラップで引き抜き防止対策を取った後、エポキシ系接着剤で回りを固めて動かないよう(抜けないよう)にした。

気休めかも知れないが、マイク入力からの信号線とPTTはシールド線を使い、各所にフェライトビーズを入れて回り込みの防止をした。

実は、これを組み上げる際、一つ困ったことがありました。それは、モジュラージャックRJ45のピンアサインです。何番ピンに何の信号が出てくるかはIC-706の取説でわかりました(アイコムのホームページからダウンロード可能です。これは大変ありがたいことでした。感謝!!)。ところが、私は普段RJ45を自分でいじっていないため、どちら側が1番でどちら側が8番なのかわからなかったのです!!!

で、インターネットで色々と検索してみました。色々資料は出てきたのですが、残念なことに、素人の私が完全に納得できるものが出てきません。そんなことをJF1OCQ三宅さんのBBSに書いところ、三宅さんが絶対確実にわかる記載で教えてくださいました。それはこうです。

  1. モジュラージャックを手に持ち、爪の部分を下にする。
  2. 爪の部分を下にしたまま、ジャックを、自分の顔に差し込むように向ける。
  3. この時、右から左に向かって1番、2番・・・・8番

これで納得できました。これで、IC-706の取説書いてあった図は、リグのボディを人間が見た時の図だと理解できました。何でもそうですが、知識のない人間(初学者)はこんな初歩的なところでつまずくものなのです・・・・


さて、これで一応完成しましたが、内部のアンプのゲイン調整が必要です。あいにく私はIC-706シリーズを持っておりません。そこで、ローカルのハムショップに聞いてみたところ、盛岡市みたけの広和さんに中古のIC-706の展示品があり、テストに使わせていただけることになりました。早速お邪魔してテストしてみました。

  1. IC-706の出力はダミーロードにつないだ。モニター用のリグを用意し、こちらは、DPにつないだ。
  2. IC-706のデフォルトマイクゲイン(レベル5)はいじらず、ALCレベルが規定の範囲内になるよう、1石マイクアンプのゲイン調整VRを調整した。

この結果、マイクゲイン調整用VRは中点より少し下側で丁度よいゲインのようでした。また、モニター出力を聞いた範囲では、回り込みや音質に問題はなく、これで使えることがわかりました。心配していた、モジュラージャックの配線間違いもなくホッとしました。

なお、アンプゲインの設定に関して追記ですが、AUXのMODA端子(Pin11)に何かつながっていると、これが内蔵マイクアンプの出力とパラになっているため、実質的にマイクゲインが下がってしまうことになるそうです。PSK31やSSTVと即時同時運用可能なセッティングをしている場合は要注意とのことです。私には当分縁のなさそうな例なのですが、追試される場合はご注意下さい(JJ1BDX力武さん、ご指摘有り難うございました)。


で、このマイクアンプを現地に持参し、運用してきました。その結果は、上々で、SSBの交信を楽しむことができました。その様子は下記の写真をご覧下さい。


運用状況(1):

TA2/JR7HANで運用した際の様子。ヘッドセットは移動に便利な小型のBM-10-4

小一時間程度SSBを運用した(42局と交信)。音質はグッドで、回り込みも問題なしとのことだった。



運用状況(2):

IC-706のマイク端子にケーブルを繋ぎ込んだところ。モジュラージャック直前に入れたスリーブコアが見える。スリーブコアは、タイラップで固定。また、2個がぶつかって欠けるのを防ぐため、間をタイラップを縛った。

今回は、100W(アンテナはバーチカル)だったので回り込みの問題が出なかったのでしょうが、リニアアンプを使う場合などは、スリーブコアの個数を増やした方がいいかも知れません。

なお、このような使い方になりますので、モジュラージャック(RJ45)にはかなりの引っ張り荷重がかかります。このコネクタは引っ張り応力にはあまり耐えられない構造とのことですから、このままではケーブル抜けてしまうか、芯線に張力がかかって部分断線等のおそれがあります。私は、その後、一旦、タイラップを切ってスリーブコアをずらし、コネクタの根本部分にセメダインスーパーを盛って、コネクタとケーブルを固定するようにしておきました(JJ1BDX力武さん、ご指摘有り難うございました)。

一発勝負の準備でしたが、おかげさまで非常にうまく行きました。最後に、種々教えていただいたJA8CCL木下さん、JH1FCZ大久保さん、JF1OCQ三宅さん、ならびに店頭でテストをさせて下さった広和の店長藤沢さんにお礼申し上げます。

(部品等の入手先一覧:いずれも通販可)
●FCZキットの入手先:キャリブレーション(これ以外では、秋葉原の千石電商などで店頭販売されています)
●スリーブコア、フェライトビーズの入手先:斎藤電気商会
●その他の部品の入手先:サトー電気


トップページに戻る