CQ誌2005年11月号記事の元原稿

QRPクラブ経由でCQ誌2005年11月号のQRP特集に記事を依頼されました。QRP仲間と内容等の相談・調整をしながら原稿を書きましたが、紙数の関係から、原稿の全ては掲載されませんでした(というか、はっきり言って沢山書きすぎですHi)。そこで、参考まで、投稿した状態での原稿をここに掲載いたします。後日談ということでお楽しみ(?)下さい。なお、原稿料の一部はQRPクラブに寄付させていただきました。


私のQRP通信ライフ 〜QRP通信を始めたきっかけと現在の楽しみ方〜

JR7HAN 花野峰行

 QRP運用は私のお気に入りの一つですが、電波法に「通信は必要最小限の出力で行うこと」と書いてあるからQRPでなければならないなどと野暮なことを考えたわけではありません。QRPが居心地のよい楽しみ方の一つだったからです。ここでは、私がQRPを始めたきっかけや私なりの楽しみ方をご紹介しましょう。

1.QRP通信を始めたきっかけ
 私がQRPを好きになった理由は、三つあるようです。最初は背景的な理由です。私は学生時代に体験した石油ショックに触発され、石油代替エネルギー開発の仕事を中心に、省エネや地球温暖化対策の仕事もしてきました。このため、無駄なエネルギーは極力使わない生き方に共感を覚えるようになっていました。
 1996年秋にアマチュア無線を再開しましたが、当初は7メガCWのDXが面白く、深夜や早朝によくワッチをしたものでした。そんな時、日曜朝8時のQRPオンエアミーティング(QRP OAM 7003kHz)に出くわしました。JA1AA庄野さんの5W信号が強力に入感していました。何度かこのOAMを聞くうち、私も庄野さんと交信してみたくなり、出力を5Wに絞ってコールしてみました。599/599で簡単に交信が出来、感動しました(写真1)。これがQRP交信を続けるきっかけになりました。

写真1 JA1AA庄野さんのQSL。HFでは初めての2way QRP交信


 その後、東京勤務になり、単身赴任となりました。QRPerのミーティングに参加できるようになりましたが、QRPerの皆さんとの交流からは、自作や移動運用などの知識やノウハウなど得るところが多く、よい気分転換になりました(写真2)。この時、単身赴任の制約の中で唯一心おきなく楽しむことの出来る自転車移動運用の楽しさを知りました。2003年に岩手に戻りましたが、これが現在の運用スタイルにつながっています。

写真2 新宿QRP懇親会後の宴会。JG6DFK児玉さんと6m AM(10mW)でアイボール交信中


2.自宅での運用
 自宅でのリグ構成を図1に示します(写真3、写真4)。7メガCWでQRP運用する場合は、QP-7(1W送信機)とSR-7(シングルスーパー受信機)がメインのリグですが、VXOの可変範囲外でコールしたい場合やバンドチェンジの場合はFT-817に切り替えます。また、SR-7では受信困難な場合は、受信だけFT-1000MPを使うことも出来るようになっています。

図1 自宅でのリグ構成 100W機とQRP機が簡単に切り替えられるようにしてある。


写真3 自宅でのリグ。FT-817のすぐ下がSR-7、その下がQP-7


写真4 自宅でのアンテナ。ルーフタワーに載せたトライバンド八木とダイポール


 なお、SR-7は、CWフィルタの追加などにより、FT-817同等並みの受信性能に改造してありますので、現在はFT-1000MPに切り替えて受信することはほとんどなくなりました(改造記はこちら)。私が交信の際、「RXはSR-7SP」と打っているのは、この改造版のSR-7です。EQT-1(100mW)やJR3ELR移動運用の微弱な信号も受信できますよ!
 QP-7は、発振段をVXO化して7002〜7003kHzの間に出られるようにしてあり、エレキーでのキーイングが行えるよう回路を追加してあります。SR-7もQP-7も手頃なキットで手軽に作ることが出来ますが、ちょっとした改良を施すことにより実用的なQRPリグになります。7メガCWの場合、私のアンテナでは、1Wあれば国内でオープンしているエリアには確実に飛んでいきます。コンディションが非常にいい時には南米とも交信できました。送受の切り替えはスナップスイッチで手動という原始的な方法ですが、私はこのSR-7とQP-7の組合せが大好きで、交信するのが一番楽しいリグです。

3.私の移動運用
 景色のよい場所などに移動運用するのは気分転換になってよいものです。関連したイベントにJE2CDC木屋川内さんの発案で始まった「QRPエコデイ」があります1)
 私は移動運用では、KX1(7/10/14メガCW用3Wトランシーバー)、FT-817、Rock Mite40(7メガCW用0.5Wトランシーバー)を使っています。なかでも、KX1は受信時の消費電流が約40mAと少なく、自動チューナーも内蔵ですので大変気に入っています。
 移動運用時の電源は3.2Ahの鉛シールバッテリーに、定格充電電流が250mAの太陽電池パネルを組み合わせています(写真5)。この太陽電池パネルはA4サイズで持ち運びに便利な上、晴天の場合は実測で200mA以上の充電電流が流れるので大変便利です。

写真5 3.2Ahの鉛シールバッテリーと定格250mA太陽電池パネル(VX-1は大きさの比較用)


 アンテナは2種類を使い分けています。一つは10m長グラス竿にエレメントを沿わせたGPです(写真6)。この給電点にチューナー(KX-QRPまたはT1)と10m長ラジアルを2本つないでいます。エレメント長を12m弱としておくと、移動時のメインバンドである7/10/14メガで問題なく使用できました(写真7)。

写真6 10m長GPの使用風景。意外と目立ちません。簡単に設置できて、よく飛びます。


写真7 10m長GPの給電点。この時は、アンテナチューナーにKX-QRPを使いましたが、小型のアンテナアナライザRF-1で簡単に調整できました。


 二つ目は300Ωリボンフィーダーで給電したマルチバンドダイポールアンテナです。これはJJ1VKL原岡さんのサイト2)で紹介されていたアンテナを参考に考えたもので、エレメント長を片側15m(両側で30m)とし、それを10m長のリボンフィーダーで給電しています。この長さは、7/10/14メガいずれのバンドでも電圧給電にならない長さ、ということで決めました。もちろん3.5メガでも問題なく使えます。
 このアンテナを7m長か10m長のグラス竿で逆V型に設置します(写真8)。給電点は、重くならないようにアクリル板を加工して小型に作りました(写真9)。このアンテナもチューナーで整合をとる必要がありますが、手持ちのチューナーはいずれも不平衡型なので、小型のフェライトコア(FT-82-77)に6回巻いたチョークで平衡/不平衡変換をしています(写真10)。

写真8 300Ωリボンフィーダー給電マルチバンド逆Vの使用風景(7m竿使用時)。これも簡単に設置できて、よく飛びます。


写真9
 給電部。エレメントは蝶ナットで簡単に取り付けられるようにしてある。


写真10 リボンフィーダーをKX1につなぎ込んだところ。KX1の内蔵チューナーで簡単に整合がとれる。300Ω平衡フィーダーと不平衡型チューナーのつなぎはコモンモードチョーク(FT-82-77コア使用)。


4.長く楽しむためのヒント(WPXへの挑戦はいかがですか?)
 WPXは、QRP特記はありませんが、細く長く継続しているアワードです3)。CWの場合、300プリフィックスから申請できます)(写真11)。QSLの所持証明はJARLにお願い出来ます。
 JCCやJCG、DXCC、WAZは「上がり」がありますが、WPXに終わりはありません。記念局運用などで次から次へと新たなプリフィックスが生まれるからです。私が400プリフィックスの申請をした際の一覧を表1に示します。
 JAだけでも100プリフィックス以上ありますので、DXだけでなく、国内交信も不可欠です。国内、DXの交信を織り交ぜながら、細く長く楽しむことが出来ると思います。

写真11 QRP運用で得たWPXアワード。見た目もきれいですし、長く楽しむことが出来ます。



5.思い出に残るQRP交信
●JA1AA庄野さん(1996年12月15日7メガCW、双方5W)記念すべき最初のHFでの2way QRP交信です。QRPでも十分飛ぶものだと感心し、それ以降、CWの国内交信はQRPでしか行わなくなりました(写真1)。

●JK1TCV栗原さん(2003年2月9日7メガCW、双方1W)双方がQP-7とSR-7を用いた最初の交信。この日、JK1OLP當銀さんと交信中の栗原さんの信号を傍受。リグ紹介を聞いて、栗原さんが作ったばかりのSR-7にQP-7を組み合わせて交信していることがわかり、喜び勇んでコールしました(写真12)。双方このリグでの交信は例がないのでは?

写真12 JK1TCV栗原さんのQSL(データ面)。初めての2way QP-7+SR-7交信でした。


●JR3ELR/8吉本さん(2003年12月7日7メガCW、当方1W、先方2.5W)仕事等で訪れた色々な場所からゲリラ的にオンエアしてくる吉本さん。可搬性重視のアンテナのため、普段はノイズレベルすれすれの微弱な信号が多いのですが、この時は、薄暗くなり始めた時間でしたので、双方グレイライン上の伝播だったようで、正真正銘の599で入感し、正直驚きました。この時、旭川は横殴りの吹雪で、体中にホッカイロを貼り付けてのオンエアだったそうです(写真13)。

写真13 吹雪の旭川からFT-817とMP-1(可搬型小型アンテナ)でオンエアしてきたJR3ELR吉本さんのQSL。「雪中氷点下6℃」の記載があります。


●8P9EM(1998年12月30日21メガCW、当方5W)QRPを始めた96年から97年頃の太陽活動は活発ではなく、私のアンテナではQRPでカリブまで飛ぶとは思えませんでした。この局は毎年この時期に出現していたのですが、この年は、以前に比べて格段に信号が強くなっていました。CQ連発のところで、届けっ、と気合いを込めてコールしたところ、一発でコールバックがあり、大変感激しました(写真14)。

写真14 QRPでは初めてのカリブになった8P9EM。QRPでは初めてのカリブです、と書いてQSLを請求したところ、「貴局が何W出していたか私は証明できない。あなた自身が知るのみである」と裏面に書いてありました。その通りです。




●HK5QGX(1998年4月12日21メガCW、当方5W)コロンビアはアクティブな局が少ないため、弱小局にとっては簡単に交信できる場所ではありません。この日はJIDXコンテストで、アンテナを北米方向に向けてCQを打っていたのですが、思いがけず先方から呼ばれて驚きました。QRP運用で珍局から呼ばれたのはこの時が最初です(写真15)。

写真15 コンテストでHK5QGX高嶋さんから呼ばれた時のQSL。まさかコロンビアから呼ばれるとは思ってもいなかったので、呼ばれた途中で舞い上がってしまい、一度ではフルコピーできませんでした。Hi


●TL8DV(2002年6月8日10メガCW、当方5W)霞ヶ浦にあるEDC社アンテナファームから8J1VLP/1を運用した時のものです。国際QRP day宣伝のため、VLP局の運用が1997年から行われていましたが、この時までアフリカとは一度も交信できていませんでした。運営委員長のJA1XB石井さんから「ここはアンテナがいい。なんとか今晩中にアフリカを探して交信し、WACを完成するように」との命令を頂いたため、各バンドを行ったり来たりしながら探し回り、明け方近くになってようやく見つけたのがこの局です。オンフレの小パイルになっていましたが、さすが20m高の2エレフルサイズ八木です。5Wでも2コールでゲットできてしまい、驚きました。電波を飛ばすには一にも二にもアンテナだということを再認識しました(写真16)。

写真16 8J1VLPにとっては初めてのアフリカ。記念局なのに呼びに回りました。



 最後になりましたが、QRPがエコ的だと言っても、求道者的スタンスでは疲れて息切れしてしまいます。細くても長く楽しめるよう、皆さん自身の居心地のいい楽しみ方を見つけてください。

■参考サイト■
1) http://qrp-net.jp/
2) http://www02.so-net.ne.jp/~jj1vkl/
3) http://www.cq-amateur-radio.com/


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